振り返りますと約20年ほど以前から、私のところにレッスンに通われていた方の中には、少なからず不妊でお困りの方がおられたように思います。
けれど余り悲壮なお顔もされず、明るく受講されていました。
そして時間の差は有りましたが、ほとんどの皆さんが妊娠された事を今でもはっきりと覚えています。
当時は今のように不妊治療という言葉も無く(あったのかも知れませんが、私の記憶には留まっておりません)「不妊治療を受けている」というお声を聴くようになったのは、2000年になってからだと思います。
日本で不妊治療が始まったのは、1983年に東北大学によって国内最初の体外受精児の誕生が報告され、その数年後から徐々に広がってきたようです。
けれど当時の採卵は腹腔鏡下で行われていましたので、結構な負担が強いられていたのも事実です。
現代では超音波ガイドを使用して、体にメスを入れる事無く採卵が出来るようになりました。何よりも薬剤の進歩によって、多数の卵胞の発育が可能となりました。
こうした医学の進歩により、不妊治療を受ける女性の数はどんどんと増えて行きました。
更に、1992年には海外で初の顕微授精が成功し、日本でもその手法を用いた治療が可能となり、不妊治療を受ける方々は益々増えているのが現状です。
体外受精が始められて以来、不妊に悩むカップルにとっての恩恵は計り知れないものがあります。しかし、その裏側では、多胎妊娠や早産、流産などが著しく増加しております。さらに深堀すれば、体外受精児の長期予後にも不安は残ります。
今一番新しいとされている生殖医療の情報として、世界の不妊治療の注目はPGS(受精卵スクーリニング)です。
受精卵の細胞の一部を取り出し、その全染色体を調べ移植することで、高齢者であっても妊娠率を驚異的に上げ、流産率を下げることが判明してきました。
世界の人口比で95%で可能ですが、残念ながらまだ日本では本格的な取り組みは遅れています。
(つづく)