尾上五月さん 1) 伝えたい日本文化の大切さ

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カラコロインタビュー第2弾は、日本舞踊 尾上流師範 尾上五月(おのえさつき)さん。 お稽古場からは、聞こえてくる長唄。
緊張する気持ちを抑えて襖を開けると…そこは正に別世界!

凛と張り詰めた空気、楚々たる姿。
向こうを指さす指先、鐘の音が聞こえる方向、心を届ける、無形のもの全てが本当に見えるように目の間に繰り広げられるお稽古場。

取材に伺い、初めて目にした世界に心を奪われる思いでした。

 

連載 第1回
自国の文化を習う事の大切さを伝えたい

 

お写真を見て「あっ!」と思われた方や、すでにご存じのファンの方も多いと思いますが、尾上五月さんはテレビ番組等でもご活躍の、元宝塚歌劇団 月組 五月梨世さんです。

日本舞踊に興味はあるけれど、ダンスやヨガなど等のお教室とは違い、見学に行くにしても何処を訪ねたらよいのやら…。
運よく「日本舞踊教室」の看板が見つけられたとしても、門をくぐる前に「敷居が高そう」「お金がかかりそう」と躊躇しそうです。

「家元制度」と聞いただけで特権階級の世界を彷彿させ、その敷居の高さからなかなか踏み出せないという方も多いのではないでしょうか?

 

今回は、現役時代から変わらぬ美しい容姿を保ち、宝塚と芸能界でさまざまな芸事に従事された尾上五月さんが最終的に選んだ「日本の伝統芸能・日本舞踊」。

その魅力についてたっぷりお話し頂き、数回にわたり掲載していきます。

 


五月先生の明るいキャラクターで笑顔の絶えないお教室ですが踊り出すと皆さん真剣!

 

― 宝塚と芸能界でさまざまな芸事に従事された五月さんが、日本舞踊の先生を選んだ思いとは?

《五月さん 談》
宝塚時代に日本舞踊を踊る機会があって、その時に「これだ!」と思いました。
何より日本舞踊が好きでしたし、運よく良い師匠に巡り合う事ができて、育てて頂き、師範を頂きました。

お教えする事で更に自分が磨かれると思いましたから 先生が出来たらいいな と思いましたが、日本舞踊の世界は3歳5歳からの世界だと思い込んでいましたので 自分が先生になれるとは思えなかったのです。

ところが、古典の日本舞踊を継承・発展させていく事でも注目されている日本舞踊協会のコンクールで予選を通過する事が出来た時に、私もお教えする事で日本舞踊を継承する一端を担えるのではないかと思い、今日に至っています。

 


お手本を見ているだけで取材陣もうっとりしてしまいます。

 

― 日本舞踊と言えば敷居が高いというイメージですが、五月さんはホームページや講演会等で「もっと気軽に!もっと身近に!」と間口を広げ、日本舞踊の普及にも努めていらっしゃいます。その思いをお話しください。

《五月さん 談》
世の中の全てが洋風のものに変わってきていていますよね。
マンションなどは畳の部屋もないところが多く、日本の伝統文化は限られた場所になってしまい、敷居は勝手にどんどん上がっているのです(笑)

我々は好きでやっているけれど、普通の方々は日本舞踊や古典芸能離れが加速しているんですね。

ですから、「もっと気軽に!もっと身近に!」をうたい文句にせざるを得なく、実はそれが本音です。
そう言わないと、日本舞踊をやる人がどんどん減ってしまうでしょ。

多分、「選ばれた人しかできません!」って日本舞踊のお教室をやっている先生は 一人もいないと思います。

家元制度と言うのがあり、おのずとピラミッドの形になっていますので、我々は底辺を支えるものとして間口を広げていく役割を担っています。
その手段の一つとして、私が宝塚出身であることは、ひとつのアドバンテージになると思います。

 

今は、習い事も多様化して「踊り」と言うだけでも多種多様なのですが、私は宝塚時代にありとあらゆる踊りやダンスを習得しているので、例えば、バレエを習っている子供に、「バレエと日本舞踊のここが違う。この体の動きが違う。この関節の使い方が違う。筋肉の動かし方が違う」ということが100%わかった上で、子供でも理解しやすい指導ができるんですね。

クラシックバレエはじめ、HIPHOP系、タップダンス、インド舞踊も、スパニッシュも、琉球舞踊も、宝塚時代にはさせて頂きました。
本当にいろいろなものをさせて頂いた中で、やっぱり日本人は日本舞踊という所に落ち着くのだと私は思います。

何故かというと、日本舞踊は誰でも必ず上達が出来るんです。
そこは確信を持って言えます。

それって「血」みたいなもので、スペインに旅行したら、道端で小さい子供たちがスパニッシュを踊っていてすごくカッコいいのですが、それが「ソウル」なんですね。で、日本人のソウルダンスは、やはり日本舞踊なんです。

盆踊りの曲が流れれば、身振り手振りをサッと真似て、大人も子供もなんとなく踊っちゃうでしょう。そして、浴衣を着たら子供たちはみんな似合います。

そういうものが受け継がれている「血」のようなものなんです。

だって、民族によって体型って違いますよね。骨格、肉の付き方など。
すべてがその民族に合った踊りが、その土地 土地で発達して来たわけで、根源的なところから違うのね。

ですから、日本人は日本舞踊を踊れば誰でも必ず上手になるんです。
やらなきゃ損でしょ! (笑)

 

お稽古が終わり全員でご挨拶。最後までびしっと気持ちの良い緊張感。

 

― 踊り以外にも、日本の伝統や文化のお話をされていらっしゃいますが…。

《五月さん 談》
文化的な事で言うと…。
例えば、日本舞踊の中で、お辞儀をする時に御扇子を置いてお辞儀をします。
御扇子を置くって、これは日本の文化ですよね。

日本は自然界が神の国なのです。
日常生活の中で神様を敬い共存する文化が所作に繋がっています。
だから自分の自国の文化を知る 歴史を知る、自分のルーツを知る、ソウルを知るという事につながります。

また、日本舞踊に限らず、着物を着ることを習うだけでも多くの発見がありますよ。

例えば、着物の女の人の袖の振りはあいているけれど、男の人の着物はあいていない。
これは、男の着物と女の着物の大きな違いの一つです。

また、身八つ口といいますが、ここがあいていると脇から手を突っ込まれてしまうとダイレクトですので、女性は脇をしめています。
パンツも履いていないから股を広げない、などね。

着物の事を習うだけで、何処から発達してこういう衣服になってきたのか?
女性がどうであったか、男性がどうであったか、という民族としての文化を知る事ができるのです。

着物ひとつにしても、世界中どこを探してもこんなに複雑な民族衣装って無いと思います。でも、それだけ日本人が優秀だという事です。

日本の新聞を見たら 漢字、ひらがな、カタカナ、3種類もキャラクターを使って、しかもアルファベットまで入って …。そうやって表現している国も無いと思います。 それだけ日本人って優秀なんですよね。

優秀であるがために複雑になった文化に誇りを持ち、難しいけれど 昔の人は全部できていたという事に誇りを持ってほしいのです。

 

休みの日は着物を着て歌舞伎を見に行くことも素敵な楽しみ方ですよね。
そういう風な楽しみ方はないのかな という事をお伝えしています。

敷居が高いとか特権階級の遊びだとか そう言う風には捉えてほしくない 一昔前は、誰でも みんな普通にやっていた事ですから、それは私たちにも普通に出来るはずなんです。

 

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私たち日本人は、日本人の血が流れています。
日本人が日本舞踊を習ったら誰でも必ず上達します!
と、熱く日本の文化についてお話しくださった五月さん。

ソウルダンスである「日本舞踊」の血が脈々と流れている…。
目から鱗の、すぐにでも踊ってみたくなるような、素晴らしいお話しでした。

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投稿者: Caracoro editer

Caracoro editer

カラコロエディターのぴょんです。体と心を健康にするための豆知識をミニコラムとしてお届けしています。皆さんの興味のある話題や取り上げてほしいテーマがあればぜひ教えてくださいね。