不妊治療は、正確にはセカンドステップである「体外受精」からが本格的な治療となり、ここからが全員、同じレールに乗って進んでいく事となります。
体外受精は1978年に英国で行われたのが始まりですが、わが国で初めて成功したのが1983年。以来、高度生殖医療としての歴史は30年以上になりました。
体外受精を行うには、採卵できる事が前提となりますが、大半の方がここで足踏みをされます。ホルモン値が悪かったり、AMH(卵巣予備機能)が低かったり、卵管閉塞や狭窄が発見されたり、子宮筋腫や卵巣脳腫が見つかったり。また、どこにも異常が無いけれどピックアップ障害が疑われたりと、それ以外にも驚くほど沢山の症状があります。
この症状別については、次回にお伝えする事にいたします。
体外受精のプロセスは ①排卵誘発 ②採卵 ③採精、精子の調整 ④受精、培養 ⑤胚移植
と五段階あります。
①排卵誘発とは?
十分に成熟した良い卵を採る事が重要になりますが、ここでもいくつかの治療が行われます。
1)自然に大きくなってくる卵を待って採卵する。
(これが最も卵巣に負担の無い方法です)
2)低刺激の誘発剤で育つのを助け、採卵する。
(卵巣の負担を出来るだけ軽減します)
3)排卵誘発剤を多量に使い、沢山の卵を採卵する。
これらは病院や医師の考え方、方針、そして受診者の卵巣機能、胞状卵胞数、年齢などから選択されますが、
専門家ではない素人の私達にはわからない分野ですので、どうしても病院や医師の勧めるままになっているのが現実のようです。
そういった意味でも、病院や医師をどのように選ぶのかは、とても大切なキーとなります。
②採卵とは?
十分に成熟した卵胞から、卵子を採取することを採卵といいます。
ここでも、静脈麻酔をする、座薬のみ、無麻酔の3つの選択があります。
麻酔を使用するか否かは、採卵を予定する数であったり、病院や医師の考え方によって決まります。
③採精・精子の調整とは?
一般的には採卵日にあわせ、家や病院で精子を採精するのですが、あらかじめ採取した精液を調整、凍結しておいたものを使用する事もあります。
この精子の調整には、
1)スイムアップ法
2)アイソレート法
3)パーコール法
などの方法があり、運動率の高い精子を捕獲します。
④受精、培養とは?
インキュベータの中で前培養をし、卵子の成熟を待ちます。その後、調整済みの精子を卵子に振りかけ、受精を待ちます。約17~20時間後に第二極体と雌雄の前核が見られるようになります。その後2分割しながら成長して行きます。
⑤胚移植とは?
一定期間培養した胚を子宮に戻す作業をいいますが、採卵周期に胚移植する場合が新鮮胚移植、一度凍結した胚を移植する事を凍結融解胚移植といいます。
そして採卵から二日後の4~8分割胚移植することを、初期胚移植。
五日ほど培養して胚盤胞になった胚を移植するのを胚盤胞移植といいます。
妊娠が成立するのに最も大切な事は、質の良い受精卵が出来るかどうかに関わってきますが、そのためには卵と精子の質を高める事が最も重要になるのです。
そして私が強く感じている事は、自然妊娠においても、体外受精などにしても、人にはそれぞれのタイミングがあると言う事です。つまり、先に述べた五段階のパートにおいても、グッドタイミングもあればバッドタイミングもあるということです。それらをしっかりとわきまえた上で、ベストなタイミングで臨んで頂くことが、妊娠の成功に繋がるはずです。
セカンドステップでも妊娠しない場合、次の顕微授精へとステップアップするのですが、顕微授精とは、卵子に極細の針で一個の精子を注入、受精させる方法です。受精卵ができるまでと、受精移行は、体外受精と同じ過程をたどります。精子の数が極端に少い、奇形精子が多い、運動力が弱い、などの男性不妊の場合、顕微授精が登場するまで妊娠は不可能でした。
けれど、1992年、顕微授精による初の成功例がベルギーで発表され、世界各国で行われるようになり、男性不妊のカップルでも妊娠出来るようになったというのは、画期的なことではあります。
現在では顕微授精の技術や培養技術の向上により、スプリットICSIという方法にも広がりを見せているようです。スプリットとは、一回の採卵で採取された卵子を二つのグループに分け、体外受精と顕微授精の両方で受精を試みる方法のことです。また、媒精で受精を試みても受精しなかった卵子に対して、顕微授精をするレスキューICSIという方法も行われるようになってきました。
顕微授精に関しては未だその歴史も浅い上に、精子を選ぶのもそれを卵子に注入するのも、全て人が介在します。顕微授精で生まれた子が成長して、命の連鎖に何ら問題が無い事を、立証してくれる事が待たれてなりません。
私が出会った妊娠を望まれるご夫婦の中にも、はっきりと男性不妊だとわかっている方もいました。ご自分のカラダに問題があり普通には妊娠できないという方や、どれだけ検査をしても異常さえ見つからない方もありました。
ウミヨガに通いながらも高度生殖医療によって赤ちゃんを授かった方々は、その治療中にも自分とご主人の心身をベストな状態まで引き上げていき、授かるためのよいタイミングを二人でしっかりとつくってきたことに他ならないのだと思います。
医療の手を借りても、妊娠は二人で向き合う仕事です。
夫婦の肉体関係を持たなくても不妊治療をすれば子どもはつくれる、そのような考え方をしている人は、そこからやり直しをする必要があると私には思われるのです。
二人が愛し合う行為は、ホルモンバランスを整える上で、欠く事の出来ない大切なものです。眠っている卵を目覚めさせ、育む力にもなります。
そして何よりも、精子を常にフレッシュにしておく最良の方法なのです。
次回は、医療の力を上手に味方につけ、ご夫婦で勝ち取った喜びの声をご紹介いたします。